2006年12月29日

お風呂の歴史

お風呂の歴史
ドミニック・ラティ(著), 高遠 弘美(翻訳)
白水社 [文庫クセジュ] (2006-02-15)
¥ 999
ISBN:978-4560508978

西欧における入浴や水泳の歴史を簡単にまとめた本で、 ローマ世界における入浴についても20ページほどが充てられている。

他の本で同内容を読んだことのある人も多いだろうが、ローマ関係で興味深いと思われたところを挙げてみる。
  • 流水をすばやくシャワーのように降りかけていたヘレニズム時代の習慣はすたれ、ゆっくりと身を沈めるローマ式入浴が広がった。
  • 水泳や冷水浴を愛したセネカは、九日に一回の市の日しか浴場に行かない同時代の人々を非難した。
  • ローマ市における公衆浴場の入場料は、男性4分の1アス、子ども無料で、女性はもっと高かった。(この金額の根拠については書いてなかった。)
    他地域はローマ市より高かった。
  • カラカラの共同浴場は昼夜営業で千人を超える入浴客を迎えることができた。ディオクレティアヌスの浴場は三千二百人の収容能力を誇った。
  • 入浴の順序は、
    1. 発汗室(蒸気で湿った部屋なら「テピダリウム」、乾燥した部屋なら「スダトリウム」、「ラコニクム」と呼ばれた。)
    2. 湯浴の部屋。(「カルダリウム」熱い部屋)
    3. 冷水浴の部屋。(「フリギダリウム」涼しくする部屋)
    4. 「デストリクタリウム」(入浴後、肌かき器で体を擦る部屋)
      または、「ウンクタリウム」(塗油やマッサージをしてもらう部屋)
  • 共同浴場の階上に住んでいたセネカは、鉛のバーベルや競技者の喘ぎ声や物売りの叫びが混ざった耳障りな音が飛び交う騒々しい場所だと嘆いている。

中世以降はフランスを中心とした入浴事情が語られている。中世初期には入浴習慣は減ってしまったが、十三、四世紀には入浴が普及した。しかし、ルネサンス期にはまた減ってしまう。十六世紀に書かれた医学書にはペスト流行を防ぐには入浴は大敵であることまで書かれているらしい。
入浴が再び見直されるのは十八世紀になってからのことのようだ。

投稿者 augustus : 2006/12/29 12:53 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月09日

Ancient Coin Collecting IV: Roman Provincial Coins

Ancient Coin Collecting IV: Roman Provincial Coins
Wayne G. Sayles(著)
Krause Pubns Inc (1998-05)
¥ 3,128
ISBN:978-0873415521

ローマの属州貨に関する入門書。

各属州の簡単な解説とコインの紹介が主な内容。
その他に、属州貨の理解に役立つ話題がいろいろ取り上げられているが、中でも、ギリシャ語の銘文の読み方の解説は簡潔で便利である。

投稿者 augustus : 2006/12/09 09:22 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月26日

ローマ人の物語 パクス・ロマーナ(上・中・下)

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)
塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 420
ISBN:978-4101181646
ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中)
塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 420
ISBN:978-4101181653
ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下)
塩野 七生(著)
新潮社 (2004-10)
¥ 380
ISBN:978-4101181660

初代ローマ皇帝アウグストゥスの統治のうまさを描いた読み物。 カエサルのように性急ではなく、ゆっくりと着実に、そして反感を買わぬように権力を掌握していく様子がわかる。塩野氏はアウグストゥスを非常に高く評価しているようだ。

中に通貨改革と題された一節があり、アウグストゥスの貨幣改革の内容が極簡単にまとめられている。(括弧内は私の感想)
  • 1アウレウス金貨=25デナリウス銀貨=100セステルティウス銅貨 という、金・銀・銅の三通貨間の、実に単純明快な関係。
    (セステルティウスより小額の銅貨の部分が必ずしも単純でないのは無視しているようだ。)
  • 額面価値と素材価値の一致。
    (金貨、銀貨については間違いないだろうが、銅貨については違うのではないだろうか?)
  • これらの通貨は、あくまでもローマ帝国の基軸通貨であって、帝国全体の共通通貨ではなかった。
    (これはその通り。)
  • アウグストゥスは、記念貨にかぎらず通貨にも、自分の横顔や自分に関係した事柄を彫らせたカエサルのやり方を踏襲した。
    (ブルートゥスやアントニウスも同様。)
  • これ以前は銀貨の名称であったセステルティウスを、アウグストゥスは、最も使用頻度の高い銅貨の名称に変えた。
    (セステルティウス銀貨の存在を知っているとは塩野氏はよく調べている。しかし、アウグストゥスよりも早く、マルクス・アントニウスが銅貨のセステルティウスを発行した先例があり、「アウグストゥスが銅貨の名称に変えた。」とは言い難いと思う。)
  • (アウグストゥスの通貨制度は)制度としては紀元4世紀までの300年間つづく。
    (3世紀には制度は崩壊してしまい、3世紀末にディオクレティアヌスが改革を行っている。)
  • アッシス
    (なぜ、アスだけ複数形で記述しているのだろう。アウレウス、デナリウス、セステルティウスなど他は皆単数形で記述している。)

基本的には小説あるいは物語なので、書いてあることをそのまま信用せず、事実かどうかは別の本も調べるのが良いだろう。

投稿者 augustus : 2006/11/26 13:48 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月23日

Ancient Coin Collecting III: The Roman World-Politics and Propaganda

Ancient Coin Collecting III: The Roman World-Politics and Propaganda
Wayne G. Sayles (著)
Krause Pubns Inc (1997-12-31)
¥ 3,772
ISBN:978-0873415330

ローマコイン収集に関する入門書。

最初の30ページほどで、銘文の読み方、造幣所の特定の仕方、発行時期の特定の仕方、貨幣の種類とその時代による変遷などローマコインの基本事項が簡潔にまとめられている。。
残りの部分の主たる内容は皇帝や簒奪者の事跡とそのコインの紹介である。本人だけでなく、その家族のコインも紹介されている。

ローマコインファンなら、Roman Coins and Their Values とともに持っていたい本である。

投稿者 augustus : 2006/11/23 11:08 | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月22日

Ancient Coin Collecting II: Numismatic Art of the Greek World

Ancient Coin Collecting II: Numismatic Art of the Greek World
Wayne G. Sayles (著)
Krause Pubns Inc (1997-03)
¥ 3,128
ISBN:978-0873415002

古代ギリシャコインの収集についての入門書。

スペイン、シチリア、南イタリア、小アジア、黒海沿岸などギリシャコインの強い影響を受けた地域も含めて地域や都市ごとの歴史とコインの紹介がされている。
また、コインに描かれている図象についても、多くのトピックが扱われており興味深い。

ローマコインも初期にはギリシャコインの強い影響を受けているので、ローマコインファンにとっても有益な本だと思う。

投稿者 augustus : 2006/11/22 17:45 | コメント (0) | トラックバック (0)

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古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
 
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