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ユダヤ人とローマ帝国

ユダヤ人とローマ帝国
大沢 武男(著)
講談社 (2001-10)
¥ 735
ISBN:978-4061495722

ナチス・ドイツや中世に顕著に見られる反ユダヤ人思想は古代ローマ時代に源を遡ることができる。本書はどのようにして反ユダヤ人思想が形成されてきたのかを解明しようとしている。

ローマ時代以前から、ユダヤ人は一神教を固く守り、他民族と摩擦を引き起こしてきた。一方で、自分たちの存在を守るため共和政ローマに接近し、その保護を受けてきた。
帝政期に入ってもユダヤ人は独自の宗教とその律法の慣習に従って生きる権利を認められてきた。ネロやハドリアヌスの時代の反乱で、神殿を失ったり、エルサレムから追い出されたりし、危険で警戒すべき民族という印象をローマの支配者層に与えてしまった。しかし、帝国側からのユダヤ人迫害は散発的、限定的なものであって、帝国は基本的にはユダヤ人を保護していたようだ。

最初期のキリスト教徒はほとんどユダヤ人であった。異邦人たちにキリスト教が受け入れられていき、福音書が成立するころまでにユダヤ人はキリスト殺しであるという考え方が作られたようである。
キリスト教がローマの支配的宗教となると、教会側から反ユダヤ的教会法がかなり出されている。ユダヤ人でありユダヤ教の慣習の中で生きているキリスト教徒もまだいたようだが、キリスト教会は彼らをユダヤ教の慣習から切り離し、ユダヤ教徒をキリスト教徒から隔離しようとしたようである。
ユダヤ教徒をキリスト教に強制改宗させようとする動きまで出てくる。

古代末期の教父であるアウグスティヌスの考え方を本書は以下のように書いている。
ユダヤ人の罪業を絶えず意識している教会にとってユダヤの民は「教会の敵」であるが、同時に彼らはキリストの真を証明するための「教会の下僕であり奴隷」なのであって、ユダヤ人が祖国なき流浪の民として四散したのも、キリスト教が世界万民に広がり、至るところで発展するために定められたことだという。ユダヤ民族の惨めな状態における生存、存続こそが、教会のための「証」であり、「奉仕」であるとされたのである。
「民族全体でキリスト殺しの罪を背負って惨めに生きてろ」ってことだろうが、怖い考え方である。このキリスト教会側の考え方で反ユダヤ思想が決定的になったのだろう。

投稿者 augustus : 2005年08月13日 13:50

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古代ローマ (ローマ帝国の歴史とコイン)
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